波乗りでん助

~ サーフィン総合研究所 ~

男になったぞ裕次郎

5月 27th, 2008 · No Comments

プロサーファーが対決するコンテストJPSA。それも優勝を決めるファイナルとなるとさすがに見逃せないドラマがたくさんあって感動しまくりです。冷たい雨が降りしきる5月最後の日曜日。千葉県鴨川のマルキで開催されたJPSAショートボード第2戦の男子決勝戦はプロサーファー同士の意地と実力がガチンコで火花を散らした近年稀にみるホットヒートでした。優勝した辻裕次郎を筆頭に、2位のジェイソン・シバタ、3位森哲太、同3位田中樹と、4人が4人とも優勝に向かってとことん実力を出しきって戦い抜いてくれたんです。俺が勝つんだというモチベーションの高さが熱い戦いを演出しました。ヒートを終了して引き上げてきた4人のプロ達の表情からは全力を出し切ったアスリートの満足感が伝わってきました。
しかし勝負は非情ですね。勝者は一人。でもそれだからこそリアルな感動が生まれてくる。
他のプロでも真似できない細身でディープなスワローテイルのクワッドを駆使する森哲太。エアを封印。そのかわりにバックサイドでギリギリハードロールインを決めまくりで決勝に勝ち上がってきました。が本番では不発。それまでポイントを稼いでいたサイズがありダンパ気味のレフトがキャッチできなくなってました。同じ3位の田中樹は得意のバーティカルムーブで優勝まで6ポイント差まで詰め寄りましたが、逆転に絶対必要だったとどめのハイポイントを稼げるセットはキャッチできなかった。

プロフェッショナルの勝負は一瞬で決まります。数少ないグッドウェイブを確実に掴み。ミスすることなく自分のイメージ通りのマニューバーを刻み付ける。そこに全力をフォーカスできるかどうかがきっちり結果に現れるんです。


辻裕次郎

自分のサーフィンを貫いたものが勝つ。実力伯仲のハイレベルのコンテストは見ていてワクワクする。とくにプロフェッショナルは魅せる勝負だから楽しい。鴨川は雨が上がり、ファイナルは時間の経過とともに、優勝争いは辻裕次郎とジェイソン・シバタ2人の一騎打ちで大いに盛り上がりました。ウェットスーツを脱ぎ捨て下半身トランクス姿。顔には日焼け止めをペインティングしてウォーリアーズとなって登場したジェイソン。マルキの岩場から強引にパドルアウト。見えないくらいのファーアウトサイドに一人で陣取りながらビッグセット狙い。ハワイで鍛え抜かれたコンペティションスピリッツとスキル。勝ちにこだわったジェイソンが選んだ戦略です。そしてその通りにビッグリッピングのバックサイドマニューバーを2度も見せつけてきたんだから大したもんです。ジェイソンは常に正々堂々。実力で勝ちにきます。そこへ今大会はさらに気迫が加わっていたんです。狙い通りのセットを待って狙い通りのマニューバーで決める。絶対に失敗は許されない。そこをジェイソンは素晴らしい集中力で乗り切ってみせた。入ってきたセット見つけた集中力。絶妙のテイクオフ。そして気合いのハードリッピング。どれも見事に決めてインサイドまで乗りついできたんです。ヒートが後半に入るまでジェイソンが優勝に1歩近づいていたのは事実です。

このままいくか。

そこに立ちはだかったのが裕次郎だった。

自分の技で勝つ。この日の裕次郎は攻めに攻めてました。怖いくらいの集中力で自分の持てる技を出し切ってみせた。クローズセクションのビッグホワイトウォーターに渾身のリッピングテイルスライドスピン720°を仕掛けて見事にメイク。私がJPSAのファイナルで初めて目にした大技でした。しかしそれでもジェイソンとの差は6ポイントあった。30分のヒート時間は残り半分を過ぎてました。勝利への一念が裕次郎を突き動かす。6ポイント差をひっくり返すにはリッピングで連続マニューバーできるグッドウェイブが絶対に必要だった。それがどこにあるか。裕次郎にはきっちりイメージできていたんでしょう。残り時間からいって最後のチャンスに狙い通りのところに狙い通りのレフトが入ってきたんです。波の形は完璧だった。裕次郎のムーブと波とが同化して気持ちよくフィニッシュでプルアウト。ジェイソンを逆転した裕次郎。

プロ初ファイナルで初優勝。

裕次郎が男になった。そう感じた瞬間でした。

ジェイソン・シバタ

Tags: コンテスト

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